廻る都会の闇と悪夢 第1章

第1章 prologue

 感染症まん延からの失業

昨年から続く感染症のまん延。
この年末近づく11月に仕事を失った…。

ボーッと空を仰ぐ昭介(しょうすけ)がいた。
自分は東京に住む45歳の会社員。いや、会社員だったといえばいいだろうか。
世界的にまん延する感染症で会社の業績が悪化し、社長が失踪…。小さい会社は即倒産になり、数人いた社員は放り出されてしまった。

職業安定所へ訪れるも、会社都合でも失業手当が支給されるのは2カ月以上先になってしまう。
しかも求人も少なく、自分に合った仕事が直ぐに決まるのは難しいかもしれない。
早急に仕事を始めなければ生活に影響が出てしまう…。
「こんなことならしっかりと貯金をしておけば良かった」そんなことをいまさら悔やむ。

そんなことをしているうちに11月も終わりに近づく。
俺は仕事を求めてインターネットサイトを彷徨い、自分にもできそうなバイトを見つけては要求に応えて派遣会社に登録を進める。最初の求人内容はその派遣会社にはなく、工場や倉庫の単発派遣が出てくる。
また別の仕事を求めて派遣会社に登録しつつつも同じようなことが繰り返される。この世界の闇を感じた。
不動産によくある既に入居が決まった物件を掲載させて、それを目当てに来たお客を「先ほど入居者様が決まってしまい、こんな物件はいかがですか?」とマニュアルにあるようなスムーズに案内される状況に似ている。

モヤモヤした気持ちの中、一つの仕事を決めた。決めたといってもスポット派遣。長い期間できる仕事ではない。
決めた仕事は倉庫作業。年末に近いということもあって、流通業は活発だ。通販やお歳暮など、店舗向けや法人、個人宅向けのものが多い時期。

俺が行ったところは大きくてキレイなできたばかりの物流拠点の倉庫。
作業内容は500ミリペットボトル48本入りの移動や積み上げ作業。
大きな倉庫といっても大型トラックに積み込む場があるために外と同じ環境下で寒い。かじかみながら作業に就く。

厳しい派遣作業

就業時間は朝9時から夕方の5時。
作業内容は単純でも、本当の力仕事である。ひたすらに500ミリペットボトル24本1ケースを2つ束ね、48本入りの1パック(約24キロ)を宛名を貼りつけながらパレットからパレットへ積み直し作業。

運搬用のケース穴はお客様用で運搬時には使用禁止、抱えて持つ以外なく1時間も続けていると腕がパンパンになってくる。
これを一日やっても数千円程度の収入しかなく、体力も気力も限界を感じた。

息が切れ、少しでも息を整えていると現場作業監督の怒号が飛んでくる。
今まで築き上げてきた自分というものは何だったんだろうか?と生き方そのものや今後の不安だけだが頭の中を駆け巡る…。
社会構造の底辺をまじまじと体感している。ここで奮い立つ人間と流されていく人間に分かれていくものと思うが…自分は果たしてどっちなんだろうか…。
作業を続けている中で頭の中を様々な思いが駆け巡っていく。

トラブル発生

そんな作業中、自分自身にちょっとしたトラブルが発生した。

朝からの作業でふらふらになり、荷物をもってパレットからパレットへ移動中、そう遠くもないパレット間に倉庫の耐震用の梁があり、そこをくぐるときに頭を強打してしまった…。

「イテェ~ッ」

言葉にならない小さな声が漏れ、その場に立ち尽くしてしまった…。よくある光景でもある。
この作業には6名ほど携わっており、みなが忙しく動いている中でそう長く立ち止まってもいられず直ぐ作業に戻った。

ほどなくして痛みはと取れ、一安心。

                                   写真はイメージです

9時から始まった作業も、やっとお昼の時間。
巨大な建物である倉庫内に食堂があり、新しく建てられた倉庫には綺麗な食堂がある。
ここが作業をする倉庫とは思えないような光景である。
たくさんあるメニューは食券で購入。その中には今月のランチメニューの表記があった。

そのランチメニューには「吉野家の牛丼」との文字が光っていた。
580円…。
この仕事の時給1040円の半分以上の金額。費用対効果が悪すぎる。

カバンの中から出勤時に買ってきたカップラーメンを取り出し、備え付けのポットからお湯を注ぎこんだ。
3分待って麵を啜る。こんなもんでも疲れた身体に染み渡る。

短い45分の休憩も終わり作業現場に戻る。
午前中と同じ作業が続く。本当にしんどい…。

途中、15時に15分休憩をはさんで終了時刻の17時を迎えることになる。
身体より腕に力が入らない…。

「あぁ…、明日は筋肉痛だな…」

でも、明日も違う現場で違う仕事…。
おそらく同じような力仕事が中心になるだろうなぁ…。
早く帰ってお風呂に入りたい。

左頭に小さなたんこぶができていた。

第1章・終了

ここまでお読みいただきありがとうございました。
今後は定期的に「廻る都会の闇と悪夢」を書いていきたいと思います。

この物語は事実をベースにしたフィクションです。
2020年から続く新型コロナの世界的流行で、様々な職種に大きな影響が出ています。
今までの常識だったビジネスモデルには大きなダメージがあり、新しいビジネススタイルが定着しつつあります。
全ての人が新しいビジネススタイルに馴染めるわけでは無く、この物語の昭介のように足元から生活が変わった方も多いと推測されます。

新型コロナがまん延してから「人と人と距離を取る」「極力人とは合わない」などと言われ、ただでさえ人とのコミュニケーションが減ってきていた現代に追い打ちをかけるような対策が長く続いています。
物々しい事件や事故、窃盗に強盗、詐欺、暴行など、最近のニュースで増えているように思うのは気のせいでしょうか?
テレビを付ければ「本日の陽性者数は」「まん延防止」「緊急事態宣言」などマスコミ連日放送して、まるで煽るかのように感じます。

「元の生活に戻る日がきっと来るだろう」と信じながらも、心のどこかに諦めもあります。
それでも人間は生きていかなければいけません。
明るい未来があることを信じて歩いていきましょう。

さて、この「廻る都会の闇と悪夢」ですが、次回第2章はまとめられ次第アップしたいと思います。
温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

では、また次回にお会いしましょう。

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