廻る都会の闇と悪夢 第2章 ~darkness~

厳しい社会情勢

紹介は疲れ切っていた…。
今まではどちらかというと頭脳労働環境のみで働いてきた自分…。
初めての肉体労働中心の環境に置かれ、自分の目標や目的が霞みつつある。

飲料水の仕事が終わり、自宅に帰った昭介は直ぐにシャワーを浴びて就寝についた。

そして翌日は朝早くから別の環境での派遣であった。
年末という季節柄、お歳暮の発送がピークを迎えており、百貨店やデパートなどからの依頼を取りまとめて発送業務を委託されている業者での仕事。
ここでは発送用の箱を組み上げて包装、発送伝票を貼り、発送先別へパレットに積み上げていく一連の作業を朝から繰り返す作業。

お歳暮といえばビール、油、その他重たいものが中心であり、それらを傷つけないように丁寧に早く流していくのだが、この作業もかなり神経を使う作業で疲弊していく…。

写真はイメージです

包装、宛名伝票貼りなどが終わったものを発送先別のパレットに積んでいくのだが、数十人いる作業員の3分の2は女性で、ほとんどが包装と伝票貼りに従事し、残りの男性が直接の労働であるパレット積載の担当になる。

もちろん、自分も漏れずにパレット積載担当。
まとめて抱えて方向別のパレットに運んで積むのだが、置いてからズラすと個別に包装しているビニールがよれてしまうために置く直前まで浮かしたまま奥まで差し込むのが非常につらい…。

そんな作業も夕方まで続くと、終了間近では腰に負担がきていてつらくなる。
昨日の腕の筋肉痛に加え、腰まで壊れてしまいそうで怖くなる…。
ただ、これが日雇い派遣の現実なのだろう。

闇が深い派遣労働

写真はイメージです

就業時間を迎え、フラフラになって帰路に着いた。
昨日の腕の筋肉痛に加え、腰も痛めてしまったかなぁ…。

「帰宅したらシャワーではなく、湯船に浸かろう」

そんなことをボーッと考えながら帰宅した紹介だった。

今はまだ週初めの月曜日。
今週はいくつか仕事を入れている。こんな状況で続くのかな…と不安がよぎるが、そんなことは言ってられない。
定職に就くまでは、なんとかこの状況を乗り越えないと…と自分に言い聞かせている。

お風呂から上がり、ひと時の自分の時間を過ごしているとスマホにメッセージが入る。

「明日のお仕事が就業先よりキャンセルになったため、ご希望にそえなくなりました」

えっ?こんなことある?
以前、なんどか派遣された就業先で、時給は安いものの仕事がしやすい場所だった。何社か派遣会社が入っていたが、自分も登録するべきかな…と考える。

急いで明日入れる派遣先を探すことになったが、時給が安くかなりキツイことが想像できる就業先しか見つからず諦めることになった。
末端である派遣労働者は、就業先であるクライアントに大きく振り回される立場であることや、それに対して仕事をいただいている派遣会社はただその事実を労働者に伝えて終わりという弱い立場であることも実感できた。

今後のことを考えてテレビをボーッと見ていると、派遣会社のCMが多く放送されていることに気付いた。
大手の会社もあれば聞いたことのない派遣会社も多く見る。
テレビCMを提供するのは決して安くはなく、大手はともかく名も聞かないような小さな派遣会社もテレビCMを提供できることに違和感を感じるのは自分だけだろうか。

労働派遣会社の闇を感じた瞬間だった…

配達業界の労働搾取

写真はイメージです

「個人事業主として雇われない就業方法」

そんなうたい文句でバイト紙やネット広告、代理店紹介などに散見され、ついつい問い合わせをした。
やっただけ収入を得、個人の頑張りで収入を増やせる就業方法との言葉に惹かれて…。

仕事がなくなってしまった翌日、少し寝坊気味で朝を迎えた。
「早く定職を見つけなければ…」
そんな焦る気持ちを抑えながらパンで朝食をとる。

お昼少し前に意を決して、昨日見つけた宅配の委託業務に電話した。
電話番号は携帯番号。少し不安を感じつもコールが鳴る。
ほどなくして感じの良い声の男性が電話に出た。

「宅配委託業務の募集を見てお電話したのですが」
相手の声質は軽快で明るく、60代前後の感じだったろうか。
「電話、ありがとうございます」
「配達のお仕事は初めてですか?」

「以前、スーパーの宅配業務はバイトでやったことがあるのですが」
「それでは大丈夫ですね」

このような感じで淡々と話が進んでいった。
業務の内容といえば、配達に使う車は持ち込みかレンタルかということで支給額が変わってくる。
配達地域は固定で、稼働日は希望曜日固定で休みは許されない。
三ヶ月はどのような理由でも退職は許されず、それでも退職される場合は違約金を支払う。
この業務は委託形式をとるために雇用契約は結ばず業務委託契約になるので36協定や労働基準法は適用されない。

業務時間は朝8時から20~21時。
配達代金は、車持ち込みの場合は一個150円。レンタルの場合は130円。
慣れれば一日の配達個数にもよるが13,000円程度にはなるそうだ…。

真っ先に頭に浮かんだ文字は

労働搾取…

この条件でも心が動いてしまった自分がいた…。
しかも、この仕事を始めてしまったら定職は遠のいてしまう。

しっかと丁寧に説明していただいたが、お断りをさせていただいた。
配達の仕事、現実はかなり厳しいものだとわかった。
多少焦り気味みな自分の性格では、違反や事故が気になってしまう…。配達時間も気になってしまい、かなりの拘束時間に引いてしまった。

今一度、定職探すことを決意した紹介(ショウスケ)だった。

第2章を終えて

第1章に引き続き、ここまで読んでいただきありがとうございました。
2022年、新型コロナ騒動も2年目を迎えています。
ダイアモンド・プリンセスが横浜港に入港した2年前の2月、ちょうど今ですね。
一向に収まらない上に、恐怖を煽るマスコミなどで経済も痛んでいます。

2021年末の仕事もだいぶ縮小していて、求人よりも求人者の方が多い買い手市場の状態になっています。
企業はこのコロナ禍で業務を拡大できない状況であり、ある意味コロナと共存を選びつつある国民の意識との乖離で求人者が多いと感じます。

国や地方公共団体は、市民や国民に給付金を支給することでそれにかかわる求人が派遣会社を中心に多く出ています。
3回目のワクチン接種に携わる派遣会社の求人も多く掲載されています。
どちらも2,000円近い時給です。
どちらも国民の税金から捻出されているものですが、元はいくらで出ているのか考えるだけで恐ろしいです。

早く健全な社会に戻ることを願っています。
では、第3章でお会いしましょう。


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